ダイエットブームでちょっと前にブームになったのが赤身肉です。
資質の少ない動物性のタンパク質の塊である赤身肉を食べることは、効率的に筋肉をつけることができることで話題になりました。
その影響で、勢いに乗ったのがいきなりステーキだったわけです。
しかしながら、スーパーなどで赤身肉を探しても売っていないことが多く、赤身肉を買い求めたいときは、コストコなどで米国産のステーキ肉を買い求める必要性があります。
霜降り肉と赤身肉の違いとは?
焼いた時に、肉汁が滴り、口に入れた時の柔らかい食感。それが一般的に考えられる和牛の特徴と言えます。いわゆる高級和牛をイメージすると、ほとんどの人は白い脂質のサシが入った牛肉をイメージするでしょう。高級和牛=霜降り肉がそのイメージにあります。
これに対して、赤身肉は、しっかりした弾力を感じます。脂質が少ない分、筋肉の弾力がそのまま食感として残るからです。
では、この霜降り肉と赤身肉の違いはどこにあるのでしょうか?
餌の違い
これらの肉の違いは、見てもわかる通り脂質の量です。脂質の量をコントロールするのは、栄養素の違いとなるわけです。
赤身肉の場合は、牧草が中心になります。「世界の果てまで行ってQ 」などの人気番組でみる海外の牧場をイメージすればわかるのですが、広大な面積の牧草地で、牛が放し飼いにされています。この時に、牧草を大量に食べているわけです。この牧草は、繊維質がメインであり脂質になりづらいです。
それに対して、日本の畜産では、広大な土地を確保できている山間部以外では、牛舎に飼っているのが普通です。そして、穀物をベースにした餌を与えます。そして、牧草も与えます。穀物はでんぷん質が豊富であるため、脂質になりやすいのが特徴です。
ちなみに、日本の米作りは、日本人も米を食べなくなった影響から、牛や豚などの畜産の餌用の稲作も行なっています。
品種の違い
当然、品種の違いもあります。人間でも黒人種の方がフィジカルが強いことがあるように、肉牛でも品種が違えば、筋肉のつき方に違いが発生します。
日本の和牛は、脂質がつきやすく、牧草を中心にした飼育をしたとしてもサシが入ります。それに対して、海外の肉牛は脂質がつきづらく、赤身肉になりやすい特徴があります。
国産の赤身肉がほぼ存在しない理由とは?
これだけの健康ブームで赤身肉の流通が増えるのは当然だと思うでしょう。国産赤身肉の生産量も増えるのが当然だと消費者は考えるかもしれません。
しかし、前述の通り、赤身肉の生産には、大きなハードルがあります。
広大な面積の土地
牧草で飼育するということはそれだけの面積の牧草地が必要ということになります。肉牛1頭につき、1ヘクタールの土地が必要らしく、家業として十分に成立する肉牛分の牧草地を確保することは現実的ではありません。
生産性に大きな違い
牧草を中心に飼育した肉牛と穀物を与えて飼育した肉牛では体格にも大きな違いが出ています。
健康ブームで赤身肉がブームだからと言っても、1頭あたりの重量に大きな差が出れば、当然価格にも差ができます。それに加えて、一般的には、脂質が少なく、水分の多い牛肉は、市場価値の低く、単価が高くなることはありません。
日本の場合は、高級和牛のガイドライン通り飼育した方が単価がつきやすいため、穀物による飼育を行なっていることになります。
まとめ
今回は霜降り肉と赤身肉の違いについて説明しました。霜降り肉の場合は、穀物を中心に与えており、品種も和牛のようにサシが入りやすい肉牛の品種が選択されています。それに対して、赤身肉は、牧草を中心に与えており、品種もアンガス牛などが挙げられます。
和牛だから赤身肉はないという意味ではなく、岩手短角和牛は、赤身の部分が多いことで有名です。
健康ブームだからと言っても、日本の場合の畜産では赤身肉が多く取れる牧草飼育牛の育成は、牧草地の面積が広大に必要であり、国内の市場では赤身肉は高く見られないことから、今後も国産の赤身肉をスーパーで拝める日は来ないでしょう。